デンマークで2社にわたり5年間働いた経験をもとに、デンマークで働くのがどんな感じなのか、まとめてみたい。
勤務時間
デンマークの働き方といえば、ワークライフバランスの重視や高い生産性といったイメージがあり、それに関連した書籍も出版されているようだ。
朝は基本的に9時始業で、終業は16時ごろ。冬は日本よりも日照時間が短く、16時にはすでに暗くなって一日が終わったような感覚になるため、ある意味ではとても合理的な働き方と言えるかも。
金曜の夕方には「フライデーバー」という社内イベントがあり、ビールなどのアルコール類や軽いスナックが提供され、社員同士の交流の場になっている。これは会社によって雰囲気に違いがあり、1社目ではほとんどの社員が参加していたのに対し、2社目では一部の社員だけが参加し、多くの社員がさっさと帰宅していた。また、金曜日には普段より早く、14時半〜15時ごろに帰る社員も多く見られた。
昼休みは日本より短く、30分ほど。基本的には社内にケータリングのランチが提供され、社員は月額400DKK程度 (1食あたり400〜500円程度)でいただける。オフィス近辺に日本のように飲食店が多くなく、デンマークでは外食が高いので、こういうシステムになっていると思われる。個人的には、このランチがキツかった。内容は、パン、ハム、チーズ、サラダに加えて、シチューのような温かい料理やグリルした鶏肉などのメインが並ぶビュッフェ形式。基本的には毎日似たような内容で、日本のように寿司やラーメン、定食など、その日の気分に合わせて選ぶ楽しみはない。言ってしまえば、変化のないランチが続くので、正直楽しみになるようなランチではなかった。
コーヒーや紅茶は無料で提供されていて、会社によってはオレンジジュースやコーラなどのソフトドリンクも自由に飲むことができた。
トータルで見ると、労働時間は日本よりもかなり少な目。公式には週37時間労働とされているが、始業/終業の管理も特に厳しくないし、実際にはおおむね32時間程度ではないかと思う。その労働時間が短い分、ものすごく効率的に働いているかというと、個人的には疑問。日本は無駄に労働時間が長いという問題はあるが、プロセスやコミュニケーションはしっかりしていて効率的な部分もある。結局は物価や給与の高さが大きく影響していると思うので、それをどう高めていくかが重要に感じる。
休暇/祝日
多くの人が休むのは、7月のバカンスシーズンと年末年始だ。夏休みは7月がピークで、日本とは異なり8月はすでに夏の終わりという印象が強い。年始の祝日は元旦のみで、日本のような三が日はないが、それでも1週目を休暇にする人は割と多い。
職種にもよると思うが、比較的自分の好きな時期に休暇を取れることが多く、日本のように有給を消化しきれないということはあまりないように感じる。
祝日は日本よりもかなり少なく、年間でおよそ10日ほど。しかも、日本と違って振替休日がないため、曜日の巡り合わせが悪い年はそれより少なくなることもある。そして、祝日は年の前半に集中していて、後半にはクリスマスと大晦日まで祝日が一切ない。
通勤
コペンハーゲンでは自転車で通勤している人が多い。郊外から通う場合は、車や電車、あるいは電車と自転車を組み合わせるケースもある(電車内に自転車を持ち込める)。
言語
デンマーク人(特にコペンハーゲン在住の人)は英語が非常に堪能で、基本的には英語で問題ない。ただし、デンマーク人同士の会話は、どうしてもデンマーク語になることが多い。日常会話であれば気にならないが、業務に関する内容であれば、最低限どんな話題かを把握できる程度にはデンマーク語が理解できた方がいいかもしれない。自分の場合は、会話はまったくできず、読みと聞き取りが少し分かる程度にとどまった。
レイオフ
自分が在籍していた2社ともにレイオフが行われたが、このあたりはアメリカの企業と同様でかなりドライな印象を受けた。アメリカの映画やドラマで見かけるように、レイオフが通知されたその日のうちに荷物をまとめて会社を出ていくといった感じで、きちんとした業務の引き継ぎが行われることもほとんどなかった。
幸い、自分はレイオフの対象にはならなかったが、自分のようにEU外から移住してきた人にとって、レイオフに当たるのはかなり厳しい状況だと思う。会社に就労ビザをサポートされている立場では、職を失うことがそのままデンマークに在留する資格を失うことを意味する。もし日本に退去することになれば、引っ越しの手間や費用も含めて大きな負担になる。デンマークに引き続き在留するためには国内で転職する必要があるが、その場合も新たな就労ビザのサポートが必要で、手続きの煩雑さから対応できる企業は限られてくる。日本国内での転職とは、その点が大きく異なる。